
コラム
サイレントキラーの高血圧にご注意を!

多くの方が健診で「血圧が高い」と指摘されても、「特に症状がないから大丈夫」「忙しいからまた今度」と受診を先延ばしにしたり、自己判断で薬の服用をやめてしまったりします。
しかし、その「大丈夫」という油断こそが、高血圧を「サイレントキラー(静かなる殺人者)」たらしめている最大の原因です。高血圧は痛みや自覚症状を伴わないまま、あなたの体内で最も大切な場所――血管――を、毎日、毎日、静かに蝕んでいるのです。
1. なぜ症状がないのに怖いのか?サイレントキラーの正体
高血圧とは、血管の中を流れる血液が、常に高い圧力で血管の壁を押し付けている状態です。
例えば、水道のホースに高すぎる水圧がかかっている状態を想像してみてください。最初は問題なくても、時間が経つにつれてホースが硬くなり、ひび割れ、最後には破裂してしまいます。
私たちの血管も全く同じです。血圧が高い状態が続くと、血管の壁は常に過度な負担を受け続けます。その結果、血管の内側が傷つき、次第に弾力を失って硬く分厚くなっていきます。これが動脈硬化です。
高血圧の怖いところは、この動脈硬化が進行しても、初期にはほとんど自覚症状がないという点です。多少、頭が重く感じたり、肩がこる程度で、「疲れているだけ」と見過ごされがちです。
この無症状の期間こそが、高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるゆえん。自覚症状が現れたときには、すでに深刻な病気を引き起こす手遅れの段階に入っていることが多いのです。
2. 放置すると招く「3大合併症」
高血圧が原因で進んだ動脈硬化は、全身の血管で起こりますが、特に脳、心臓、腎臓という生命維持に不可欠な臓器の血管にダメージを与え、取り返しのつかない「3大合併症」を引き起こします。
① 脳卒中
脳の血管に動脈硬化が進むと、血管が詰まる脳梗塞や、高圧に耐えきれず血管が破れる脳出血(これらを総称して脳卒中といいます)のリスクが跳ね上がります。
脳卒中は、突然、体の片側の麻痺や言語障害を引き起こし、寝たきりになる可能性のある深刻な病気です。命が助かっても、生活の質(QOL)は大きく低下してしまいます。
② 心筋梗塞
心臓の筋肉に血液を送る冠動脈に動脈硬化が起こり、血管が狭くなると狭心症に、完全に詰まると心筋梗塞になります。心筋梗塞は、激しい胸の痛みと共に、命に関わる緊急性の高い病気です。
また、常に高い血圧に対抗して心臓が無理に働き続けると、心臓の筋肉が疲弊し、全身に血液を送るポンプ機能が低下する心不全に至ります。
③ 慢性腎不全
腎臓は、体内の老廃物をろ過する重要な役割を担っていますが、そのろ過装置は非常に細い血管の集まりでできています。高血圧は、この細い血管を破壊し、腎臓の働きを徐々に低下させます。
腎臓病は静かに進行し、気づいたときには慢性腎臓病(CKD)となり、最終的には人工的に血液をきれいにする透析療法が必要になる可能性があります。
3. 予防のための第一歩:治療は「未来への投資」
高血圧の治療は、「薬を飲んで一時的に血圧を下げる」対症療法ではありません。それは、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病といった将来の深刻な病気を予防するための、あなたの健康への「投資」です。
「薬を一度飲んだら一生やめられないのでは?」と心配される方もいますが、最も大切なのは、医師と一緒に目標血圧までコントロールし、血管へのダメージを最小限に抑えることです。
今日からできる大切なこと
1. 定期的な受診と服薬の継続
自己判断で薬を中断したり、受診を止めたりしないでください。血圧の薬は、あなたの未来の健康を守るための最も効果的な予防策です。
2. 家庭血圧の測定
ぜひご自宅で血圧を測る習慣をつけてください。クリニックで測る血圧だけでなく、リラックスした状態での毎日のデータが、医師が適切な治療を判断するための貴重な情報となります。
3. 生活習慣の見直し
• 減塩: 特に意識して塩分摂取量を減らしましょう。
• 適度な運動: 軽いウォーキングなど、無理のない範囲で継続しましょう。
• 規則正しい生活: 十分な睡眠と、ストレスを溜めない生活を心がけましょう。
4. まとめ
未来の健康のために今、できること
高血圧はコントロールできる病気です。
「面倒くさい」「症状がないから」と放置することは、数年後、数十年後にあなたの生活の質を大きく損なう合併症のリスクを高めることにつながります。
あなたの健康は、あなた自身の責任です。未来の健やかな生活のために、ぜひ今日から私たちのクリニックと一緒に、血圧をコントロールしていく一歩を踏み出しましょう。
不安なこと、疑問に思うことがあれば、いつでもお気軽に医師や看護師にご相談ください。






